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判例分析

判例分析説明義務に関する判例3

(1)判決日等
H17.9.8
判時1912
P16~

(2)発生時期等
H6.5
31歳女性
(出産時)

(3)事例
帝王切開術による分娩を強く希望していた夫婦に経膣分娩を勧めた医師の説明が同夫婦に対して経膣分娩の場合の危険性を理解した上で経膣分娩を受け入れるか否かについて判断する機会を与えるべき義務を尽くしたものとはいえないとされた事例。

夫婦:骨盤位のため帝王切開希望
医師:経膣分娩で可能,問題が生じれば帝王切開に以降するとして,経膣分娩すすめる。
 破水後,臍帯の膣内脱出が起こり,胎児の心拍数急激に低下。
重度の仮死状態で長男出生,死亡。

(4)争点
患者の有効な同意を得るための説明義務の内容等。

(5)内容
帝王切開術を希望するというAらの申出には医学的知見に照らし相応の理由があったということができるから,医師は,これに配慮し,Aらに対し,分娩誘発を開始するまでの間に,胎児のできるだけ新しい推定体重,胎位その他の骨盤位の場合における分娩方法の選択に当たっての重要な判断要素となる事項をあげて,経膣分娩によるとの方針が相当であるとする理由について具体的に説明するとともに,帝王切開術は移行までに一定の時間を要するから,移行することが相当でないと判断される緊急の事態も生じうることなどを告げ,その後,陣痛促進剤の点滴投与を始めるまでには,胎児が複殿位であることも告げて,Aらが胎児の最新の状態を認識し,経膣分娩の場合の危険性を具体的に理解した上で,経膣分娩を受け入れるか否かについて判断する機会を与えるべき義務があった。
医師は,Aらに対し,一般的な経膣分娩の危険性について一応の説明はしたものの,胎児の最新の状態とこれらに基づく経膣分娩の選択理由を十分に説明しなかった上,もし分娩中に何か起こったらすぐにでも帝王切開術に移れるのだから心配はないなどと異常事態が生じた場合の経膣分娩から帝王切開術への移行について誤解を与えるような説明をしたというのであるから,医師には説明義務を尽くしたものと言うことはできない。

(6)ポイント
夫婦に対する自己決定権の侵害を認めたものであり,夫も,親として,子が安全に生まれることに関し一定の利益を有するものと解し,夫についても,分娩方法の選択について妻と共に協議し,判断する機会が与えられるべき場合があることを示したものと考えられる。