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判例分析

判例分析介護事故の判例 仙台地裁平成21年7月10日判決

   一部認容し440万円の損害賠償を認める 
  <当事者>
   被害者は80歳代女性。介護施設は短期生活介護事業所を設置する医療法人
  <事案の概要>
   被害者Xは、平成18年4月脳梗塞、加齢によるアルツハイマー型の認知症と診断。同年10月に介護保険の要介護度が2から5に変更。同年10月4日から10月6日まで被告施設で1回目のショートステイの利用申込書には、「重度認知症」、「精神状態は日常生活に支障をきたすような症状」、「意思疎通困難が頻繁にあり常時介護を必要とする」、「左耳聞こえない」と記載。
1回目ショートステイの介護記録には徘徊、帰宅行動、他室侵入など多数の問題行動が記載。
10月28日からの2回目のショートステイでも同様の問題行動が頻発。10月31日7時ころ居室においてで転倒しているところを発見。右大腿骨転子部骨折と診断。
  <原告の主張>
   Xは短期入所した時点で、重度認知症であり、その精神状態は日常生活に支障をきたすような症状、意志疎通困難が頻繁にあり常時介護を必要とする状態にあった。
介護記録を見ると、他居室侵入、深夜徘徊、帰宅願望、クローゼットなどでのもの探しなどの問題行動を頻回に起こしていた。重症認知症患者の介護施設における事故で最も多いのは転倒及びベッド、いす等からの転落事故である。従って入所中の重症認知症患者に顕著な問題行動が認められた場合には、居室内を含む施設内での転倒、転落が予見されるのであるから、それを防止する処置を講ずべき義務がある。具体的には歩行時の見守り、居室への頻回の訪室、椅子等に上ろうとしないように手の届かない場所に所持品をおかないなどの予防措置が必要であった。
   そして施設としてなしうる通常の予防処置をとってもなお転倒、転落などが予想されるような問題行動が認められる場合には、そのことを家族などに知らせて引取りを要請すべきだった。
  <裁判所の判断>
   上記判決では原告の主張をほぼ認め440万円の損害賠償を命じた。被告は控訴せず判決は確定した。
  <考察>
重度の認知症の場合には介護事故を完全に防ぐのは難しいかもしれない。しかし具体的な問題行動を認識し、かつ当該施設で対応が困難と判断される場合には家族にそのことを告げて引き取りを求める義務がある。また施設に受け入れるに当たっては、当該施設で対応可能かについて慎重に検討しなければならず、対応が困難な場合にはそもそも受け入れるべきではないと思われる。