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最高裁医療過誤判例分析

転医・転送義務に関する判例3

(1)判決日等
H19.4.3
判時1969
P57~

(2)発生時期等
H13.12
34歳男性

(3)事例
精神科病院に入院中の患者が消化管出血による吐血等の際に吐物を誤嚥して窒息死した場合において担当医に転送義務違反の過失があるとした原審の判断に違法があるとされた事例。

早朝 吐物,吐血 認める
  消化管出血疑い 内服薬投与
PM3:30頃 体温上昇 脈微弱等
     強心剤注射
PM4:50 多量の吐血,嘔吐
    意識消失
PM5:14 死亡

(4)争点 
消化管出血による吐血等の際に吐物を誤嚥して窒息死したことにつき,担当医師に適切な時期に転院させなかった過失があるか。

(5)内容
Aは発熱,脈微弱,酸素飽和度の低下等の呼吸不全の症状を呈していたが,①頻脈とはいえず,急激な血圧低下も見られず,酸素吸入等が行われた後はAにチアノーゼや四肢冷感はなく,体動も見られたこと,②Aに循環血液量減少性ショックの原因になるような多量の消化管出血を疑わせる症状があったとはうかがわれないこと,③病理解剖の結果に照らせば,Aが感染性ショックに陥っていたとも考えがたいことなどに照らすと,その時点で,担当医師に転送義務又は気道確保義務に違反した過失があるとした原審の判断は,経験則に反するなどとして,原判決を破棄した。