(1)判決日等
H15.11.14
判時1847
P30~
(2)発生時期等
H6.12
男性
(3)事例
食道がんの手術の際に患者の気管内に挿入された管が手術後に抜かれた後に患者が進行性のこう頭浮腫により上気道狭窄から閉塞を起こして呼吸停止及び心停止に至った場合において担当医師に再挿管等の気道確保のための適切な処置を採るべき注意義務を怠った過失があるとされた事例。
6日 食道全摘術
咽頭胃吻合術
18日 抜管
胸くうドレーンの逆流生じる
(吸気困難状態高度)
再挿管せず様子をみる
約15分後 四肢冷感
チアノーゼ等
挿管試みるも心停止に。
(4)争点
抜管後の呼吸状態の管理,再挿管等の気道確保のための適切な処置を執ることを怠った過失の有無。
(5)内容
本件のような食道の全摘術,食道がん根治術の場合,気管内に挿入された管が抜かれた後に上気道の閉塞等が発生する危険性は高く,抜管後においては,患者の呼吸状態を十分に観察して気道確保の処置に備える必要があり,特に抜管後1時間は要注意であるとされていることなどの事実関係等に照らすと,担当医は,胸くうドレーンの逆流が生じた時点で,Aのこう頭浮腫の状態が相当程度進行しており,すでに呼吸が相当困難な状態にあると認識することが可能であり,これが更に進行すれば,上気宇道狭窄から閉塞に至り,呼吸停止,ひいては心停止に至ることも十分に予測することができたとみるべきであるから,担当医には,その時点で,再挿管等の気道確保のための適切な処置を採るべき注意義務があり,これを怠った過失がある。