医療問題研究会・弁護団2000年全国交流集会報告
2000年11月10日
医師賠償責任保険の問題点
仙台医療問題研究会
弁護士 坂野智憲
1、日本医師会医師賠償責任保険(日医医賠責保険)制度の概要
① 日医医賠責保険は、社団法人日本医師会を保険契約者として損害保険会社5社(東京海上=幹事会社、安田火災、大正海上、日本火災、住友海上)との間で締結される。被保険者は日医A1会員とA2会員。保険期間1年間、年間填補限度額1被保険者につき1億円。免責100万円。
② 医療事故が起こり患者側から損害賠償請求(文書口頭問わず)を受けた場合は、事故から紛争に至った経緯を「事故報告書」として作成し、所属郡市区医師会を通じて都道府県医師会に提出。
都道府県医師会は事故調査の結果に基づき、日医医賠責保険の紛争処理手続に委ねるか否かを決定する。都道府県医師会は当該事案につき請求額が100万円を超えると予想される場合には、日医医賠責保険の紛争処理手続に委ねる決定をなし、一件書類を作成の上日本医師会へ「付託」する。
「付託」された事案は「日医医賠責保険」制度の中の「調査委員会」の調査・検討を経て、中立公正な判定機構としての「日本医師会医師賠償責任審査会」に上程され、その審査結果に基づいた処理方針が日本医師会から都道府県医師会に通知される。
③ 本制度上の制約
会員独自の判断や所属郡市区医師会・都道府県医師会の判断で勝手に患者側に「賠償金」(見舞金と称しても同様)、「治療費、生活費等」の支払をしたり、あるいはこれらの支払を約束した事案については、その約束が口頭であれ、念書・示談書・和解書によるものであれ、付託されても日医医賠責保険の適用はない。
賠償責任審査会の審査結果に基づいた処理方針が都道府県医師会へ通知される前に同様な支払や約束がなされた場合も、日医医賠責保険の適用はない。
訴訟事件などの経過は絶えず都道府県医師会に報告し、医師に不利な鑑定書の提出、職権による和解勧告、敗訴判決など重要な転機を迎えたときは、遅滞なく所属都道府県医師会を通じてその都度日医の指示(処理方針)を受ける必要がある。
④ 弁護士の選任
都道府県医師会・日本医師会・保険会社の三者協議により各事件ごとに弁護士の選任を行う。弁護士の通常の諸費用・報酬は日医医賠責保険で認める範囲で保険金として支払われる。
会員が自分で弁護士を選任することはできるが、医賠責等の保険によるカバーを期待する場合は、予め弁護士の選任について医師会と保険会社に相談し同意を得ることが必要。保険者の指示に従って交渉しない限り保険金は給付されない。独自に依頼した場合はその弁護士費用は保険からは給付されない。
2、運用状況
未確認情報に過ぎませんが、平成4年は256件が審査会にかけられ、支払額(但し予算規模)が34億5000万円、平成9年の支払額は約60億円とのこと。
アンケート結果は別紙のとおり。
3、問題点
① 医療機関の作成する「事故報告書」、都道府県医師会の作成する「一件書類」の内容が一切明らかにされず、被害者側の意見が反映されない。被害者側で意見書や資料を出してもそれがどのように扱われるのか不明。
② 調査委員会がどのようなメンバーによって構成され、どのような方法で調査・検討されているのか不明。被害者側の意見、資料の提出の機会がない。
③ 賠償責任審査会の構成が不明(医師6名法律家4名で構成されると言われている)。審査方法が不明で被害者側の意見、資料の提出の機会がない。
④ 賠償責任審査会の審査期間は数ヶ月から2年かかる。
⑤ 審査結果は有責、無責の形でしか知らされない。理由を聞いても答えないか、過失なし、因果関係なしとの抽象的なもの。医師会の顧問弁護士にも詳しい理由は知らされない。
⑥ 審査会の結果が出て日本医師会から処理方針が通知されるまでは賠償金などの支払い約束ができないためそれまでは事実上示談交渉自体不可能となっている。
⑦ 請求額100万円を超える案件は、全て日医医賠責保険の紛争処理手続に委ねる決定をしなければならず、被保険者ないし都道府県医師会の判断で処理することが不可能となっている。
⑧ 日本医師会の処理方針に反する合意の場合は保険金は支払われないため、被保険者が過失を認めている場合でも被保険者ないし都道府県医師会の判断で示談することが不可能となっている。
仮に有責の結論が出ても日本医師会の決めた金額以外の示談はできないことになっている。これは裁判所の職権和解の勧告があった場合でも同じ。
⑨ 敗訴判決があっても控訴するか否かは日本医師会が決める。
⑩ 被保険者が弁護士を選任するに当たっても医師会と保険会社の同意を得なければならず、またその処理方針に従わない場合は保険の適用がない。
4、提言
医療事故被害者の早期救済の必要性は論を待たない。医療事故を起こした医師にとっても責任ありと考えている場合には、医師賠償責任保険による早期解決を望んでいるはず。しかし現実には医師がそのように望んでも医師賠償責任保険の制度自体が早期解決を阻害する構造となっている。
また医師が責任を認めない場合であっても、その全てを裁判による解決に委ねることは徒に紛争解決を遅延させるだけ。アンケート結果によれば現在の医師賠償責任保険に対する評価は概ね否定的で、期待しても無駄なので提訴してしまうとの意見が多数である。しかし裁判による解決はどんなに訴訟の促進を図っても裁判制度上の限界がある。また裁判所の和解勧告があっても全て日本医師会にお伺いを立てなければその先に進めないということでは日本医師会の審査制度そのものの改善がなされない限り裁判による迅速な解決は望めない。
「日本医師会医師賠償責任審査会」がADRとしての機能を持つようになればより早期に医療事故紛争の解決がなされるはず。そしてそれは被害者のみならず医師の立場に立っても有益なこと。裁判所の負担が減るというメリットもある。交通事故紛争処理センターが交通事故の早期かつ安価な解決に大きな役割を果たしているのは周知のとおりで、現在の賠償責任審査会にかわるものとして都道府県単位でこのような紛争処理期間を設置すれば医療事故被害の救済に画期的な役割を果たすようになるのではないか。
また医師会の賠償責任審査会には膨大な量の事故データが集積されているはずでこれが匿名であっても一般の医師に公開されれば医療事故防止に大きな役割を果たすはず。
医療事故情報センターで医療事故紛争処理センター構想のようなものを作って医師会、保険会社、弁護士会などに提言していくことはできないか。
会場報告
【司会】ひき続きまして仙台のほうからご報告をいただきます。仙台の坂野先生ご用意ください。テーマは「医師賠償責任保険の問題点」です。
【坂野】ご紹介にあずかりました坂野です。このテーマで報告をすることになりましたのは、仙台である弁護士が虫垂炎の患者さんがいて、それを医者が発見見落としたものですので穿孔が生じて腹膜炎になってしまったという事案で、そのお医者さんはすごく誠実な方らしくて奥さんともども合計9回にわたってお見舞いに来てくださった。それで示談の話をしましょうかということになっていたのが、突如として医師会の顧問弁護士のほうから中止がきて審査にかけているからその結果が出るまでは交渉できません、と。交渉すらできないという回答だったんですね。
それは被害者救済にとってももちろん不幸なことですけれども、お医者さんにとってもきわめて何のための保険かということで、お医者さんにとっても意味がないんじゃないかという問題意識が示されました。
もう1つは非常に審査期間が長いということで実際に1年以上待たされている人がいまして、待たされ賃、待たされたこと自体による慰謝料請求を日本医師会相手に起こそうかと本気で今考えている弁護士もおります。というような問題意識のもとにこの問題について調べてみようということになったわけです。
私個人としてはもう個人開業医の場合には、最初の頃には証拠保全して過失があると思えば内容証明で請求してやったんですけれども、そうするとしばらく審査の結果が出るまでお待ちくださいと言われて、最初の頃は馬鹿正直に待っていたんですね。3か月、半年待ってそれで結局まず間違いなく100%無責の回答ということで訴訟提起ということの繰り返しだったものですので、私は最近では一切そういうことはしませんで、個人開業医相手の場合にはすべて最初から訴訟をやる、交渉もなにもしないということにしていたんですけれども、ただそういうふうに見限っちゃっていいのかなということで、もう1度医賠責について勉強して何か改善の方法はないのかということを考えるべきだと私自身思いましてちょっと調べてみました。
調べると申しましてもオリジナルの資料に接することが実はできませんでした。ここに書いてあることは日本母性保護医協会が作成した医療事故防止のマニュアルのなかに記載されていたものを要約して書いたものですので、オリジナルの情報ではないので確実に信頼できるかどうかは保障の限りではございません。
そのなかに書いてあったことで、制度の概要についてですけれども、日医医賠責保険については、社団法人日本医師会が保険契約者として損害保険5社と締結される。つまり各医師との間の保険契約ではない。医師会と損害保険会社との契約で被保険者が医師だということになっているみたいです。保険期間は1年間、年間の填補限度額が1被保険者について1億円、免責が100万円、こういうことです。
②の部分については果たして約款上こういう制約があるのか日本医師会もしくは都道府県単位の医師会の内部的な規則による制約あるいは手続きなのか、そのへんはっきりしませんけれども、一応医療事故が起こった場合流れとして②に記載されているように事故報告書のかたちで市区医師会を通じて都道府県医師会に事故の経過が提出される。
それで都道府県医師会が一応事故の調査をすることになっているみたいですね。事故調査をしてその結果に基づいて医賠責の紛争処理手続きに委ねるかどうかを決定する。ただし、これは裁量があるわけではなくて請求額が100万円を超えると予想される場合には必ず日医の紛争処理手続に委ねる決定をしたうえで、日本医師会に付託しなくてはいけないということになっているみたいです。付託された案件は日医医賠責制度のなかのまず調査委員会というところに回されて調査検討がなさて、それを経て一応中立公正だとされている判定機構としての「日本医師会医師賠償責任審査会」に上程される。そこの審査結果に基づいた処理方針が医師会を通じて各都道府県の医師会に通知され、それが医師会の顧問弁護士のところにやってくる。こういう流れになっているわけですね。この流れを経て長い時間を経たうえでないと結論が出てこないということになっているわけです。
それから保険の制度上の制約としては、会員独自の判断でお金を払っちゃった場合、これは見舞い金と称してもわずかでも払った場合には、そもそもこの日本医師賠償責任保険の適用自体がないんだということが書いてありました。例えば1000万で示談してそれが不当だから認めないということではなくて、見舞い金として100万でも払ってしまうとそのこと自体を理由として保険を一切適用しませんよ、ということがいえるんだということが書いてありました。これ本当かな? と思ったんですけれども、みなさんにアンケート調査を行った結果山形の先生から実際にそういうことを言われて、「あの見舞い金はなかったことにしてくれ、渡さなかったことにしてくれ」と逆に頼まれたというケースも報告されていますので、やはりこの運用は本当なんだろうと思います。
その他にはこういった処理方針が通知される前には前に約束、実際にお金を払わなくても払う約束なんかをした場合も保険の適用がないということにされているみたいです。実際裁判になった後も絶えず都道府県医師会に報告することになっていて、とくに不利な鑑定書ですとか職権による和解勧告、敗訴判決とかの転機を迎えたときには必ず医師会のほうに報告して処理方針、指示を受ける必要がある。これもアンケートの調査のなかに出てきましたけれども、病院側はもう一審敗訴して責任を認めて控訴したくないということだったんだけれども、医師会の意向として控訴せざるを得なかったという事案も報告されております。
弁護士の選任についても自由ではありませんで、基本的に医師会のほうでつけてくれるわけですけれども、自分で弁護士を選任する場合にはやはり必ず事前に相談して同意を得なくてはいけない。医師会と保険会社両方の同意を得なくてはいけない。そのうえで保険者の指示に従って交渉しないと保険金は給付されませんよ、ということになっている。独自に依頼した場合の弁護士費用は保険から給付されない。その弁護士費用は出されないということになっているみたいです。
以上が制度の概要なんですけれども、運用状況としてこれも全然確認する術がなかったので私がある所で聞きかじった情報を載せただけですけれども、平成4年度は256件が審査にかけられた。支払額としては予算規模で34億5000万ぐらい。平成9年は60億円にのぼって、そのせいでこの間日医の会費がかなり値上げされたということですね。それ以上の詳しい運用状況はわかりませんでした。 問題点としましてはここに記載したとおりで、医療機関が作成するとされる「事故報告書」、都道府県医師会が作成するとされる「一件書類」、これがいったいどういうものなのか一切内容が明らかにされませんし、被害者側の意見も反映されない。また仮に内容証明とかで詳しく代理人弁護士のほうで医師会宛てに出してやってもいったいそれがどのように扱われるのかもまったく不明である。
あとは、調査委員会および審査会の構成はどういうふうになされているのか一切ブラックボックスになっている。おそらく審査会のメンバーはたぶん10人、これはあちこちでよく言われていますので間違いないんだろうと思うんですけれども、その下にいる調査委員会、実質的にはここがやっているんだろうと思うんですけれどもどういうふうになっているのかがまったくわからないということです。
審査期間についてもアンケート調査、短いのは2か月というものもあるんですけれども、それはちょっと短すぎるんじゃないかと思うんですけれども、長いのだと2年ぐらいかかっているというものあります。だいたい半年から1年というアンケートの回答が多かったです。
審査結果については有責、無責のかたちでしか知らされない。理由を聞いても教えてくれない。医師会の顧問弁護士自体が知らされていないということのようです。アンケート結果でも顧問弁護士からそういうふうに言われたという報告がなされています。
日本医師会からの処理方針が通知されるまでは、示談ができないどころか示談の交渉自体ができないということになっているわけですね。これはお医者さんにとってもかなり厳しい立場におかれるわけで、私が実際経験した例ではお医者さんのほうから相談を受けて、歯医者さんで誤って歯を抜いてしまったという単純な事案でもう過失は明らかだから誤って示談したいということで、しかも何度も何度も足を運んで謝っていた事案なんですけれども、保険会社のほうでは結論が出ていないということで弁護士をたてて交渉すらしてくれないんですという相談を受けて実際に保険が機能していないのかなと、一定の審査機関の結論が出るまでは交渉すらしてくれないということでお医者さん自身困っているような実例があると思います。
実際裁判が進んで和解の勧告があった場合でも、裁判所の職権和解勧告であったとしても保険会社が駄目と、医師会のほうで駄目といえば、もうそれで駄目なわけですね。実際示談交渉して和解の席で増額の話をしても、相手方の代理人はその場で検討するでもなく、医師会の意見を聞いてみますとか医師会を説得してみますということばなんですね。結局われわれはお医者さんと争っているのかそれとも医師会と争っているのかと、いったい誰が被告なのかということにつながっていくんだと思います。そういった問題点を指摘できると思います。
こういったことはみなさん日常の事件処理で十分感じていることだと思うので、そのうえで大多数のみなさんはもうこれはしようがない、こういうもんなんだということで諦めに似た感じをもっておられると思うんですね。それでしようがないかなと私も思ってはいたんですけれども、やはり早期解決という観点から考えると本当にこの保険の存在自体が本来は被害を回復すべき保険の存在自体が大きな支障になっている。いくら個々の事件処理で立証方法、主張方法を工夫して審理期間を短くしようと思っても、この保険制度自体改善されないかぎりはそういった小手先の促進策では根本的な早期解決というのは裁判所でも図れないんじゃないかと思うようになってきました。
審査機関が例えばADR的に機能すれば裁判外でどんどん解決が図れるというメリットもあるのかなという気がします。さらには平成4年時点で年間256件の医療事故が審査にかけられたわけですけれども、これは通算すれば10年間で2500件、20年間で5000件、それだけの膨大な医療事故のデータベースがこの審査会にあるわけですね。それが医療事故の防止についてはまったく活用されていないで、眠っている。これだけの量の情報が1か所に集まっているというのは、おそらくここにしかないはずなので、それをなんとか情報公開というかたちで公にして医療事故の防止に役立たせるという方法が考えられないかなと思っております。
ただそういうふうに言っていただけではどうしようもないので具体的になんらかの行動を起こすべきなんじゃないかなと思うんですけれども、それでいろんな方面でいろんな声をあげていかないと、この制度自体が変わっていかない。日医の賠償保険制度は基本的には医者と医師会と保険会社、この三者間の法律問題で患者とは直接関係ないわけですから患者のほうで当然言う権利もないわけなので、社会のなかでいろんな方面からの声をあげる。世間がこの保険制度の問題点に注目して外から圧力をかけていくということがやはり考えられなくてはいけないと思います。
そういうことで今仙台のほうでは、先ほど話し合ったばかりではあるんですけれども、仙台の医療問題研究会が一応中心になって各地の医療問題弁護団、研究会の連名で今回のアンケート結果なんかを踏まえて日医の賠償保険制度について協議したいということを、日本医師会に申し出をしたらどうか、あるいは最初はなかなかのってこないでしょうから、今回のアンケート結果なんかをマスコミに公表して社会の注目を集めたうでなんとか医師会との交渉とか、交渉が駄目なら公開質問状とか、そういったアピールをしていきたいと考えています。だいたい私の報告はそんなところですので、具体的にどんな方法が考えられるかについてのご意見等あれば発言していただければと思います。以上です。
【司会】ありがとうございました。医賠責についてはそれぞれみなさん本当にいろんな問題をかあけておられると思います。さまざまな論点も今日のアンケートのなかにも出てきておりますけれどもいちいち議論している時間はまったくございますので、最後の坂野先生から問題提起のありました医賠責をよりいい方向になんらかのかたちで変えていくにはどうすればいいのかという観点でアイディアなり自分もやるぞみたいなことも含めてご発言いただければぜひお願いしたいと思います。
【仙台医療問題考え会 フジタ】これは私もよくお医者さんと話をしているとお医者さん自体が医師会とか保険会社に不満を持っているんですね。保険会社になぜすぐ交通事故があったみたいにそこの病院でかかって思わぬ事故が出たんだからという場合には保険金を出してくれっていったらそれを全国的にやっているとものすごく医療過誤の件数なので、もう保険会社がパンクするというような話を聞いて、それをするためには少なくとも保険料を今の10倍にしなきゃならないという話を聞いたんですね。この問題を考えるときには保険金が出やすくするためにお医者さんのほうで保険料を、それじゃなくても今でも10万以上の保険料を年間払っているということなので、どの程度までだったらばそういう制度にしても保険金のアップを容認できるかという問題もお医者さんの意識をアンケート調査なりいろいろ懇談するということも必要じゃないかと思いまして、一言。
【司会】はい。アメリカなどではとくに1000万を超えるような保険料を払っているケースもあるような話を聞いたことがありますけれども。
【愛知 ウエダ】実は私は患者側をやる前に医師側の代理人を1件やりまして、そのときにこの日本医師会に機構についてはかなり対立というか、医師会から見離されたお医者さんを弁護していたものですからそういう経験がありまして、今の報告者の方よくわからないんですけれども、約款が手に入ってないんですか?(報告者:ない)あります、私のところに。当時の約款についての、本当に簡単な解釈なんですけれども医師会の新聞が出ているんですよ。それほど約款から出ているものではないんですが、あまりオープンにしてはいけないのかな? ってよくわからないんですけれども、内々にということであれば、私のほうから差し上げますので、1回約款を検討されてちょっと変わっているかもしれませんから当時からしたら、いかがかと思います。
1点ちょっと、日本医師会の決めた金額以外の示談はできないというふうにおっしゃっているんですが、私のやったケースでは結局訴訟中に日医の6000万の回答がきたんですね。ところが患者の方は非常に怒っていてまた医者もお金があったものですから、実は1億円を上乗せして話つけているんですよ。だから昔の事件だからよくわからないんです、たぶん1億6000万で和解の示談を作ったと思うんですよね。だから示談できなというのは不正確ではないか。だから上乗せを請求するということは、やっぱりできると私は思って実際やっているんですけれども、以上の点です。
【司会】ご紹介ありがとうございました。
【埼玉 オオクラ】今医師賠償責任保険の件でやはりどう改革していくかという点で今みなさんお感じなっている方が多いと思うんですけれども、医賠責の関係以前は14級、12級とか全部非該当というケースが多かったと思うんですけれども、マスコミでとくに朝日等が週間朝日とか朝日新聞で非常に問題を大きくした関係で2年前にそうした異議申立の救済の組織ができましたと思うんですよね。この問題、医療問題非常に読売新聞なんかも連載していると思うんですけれども、この保険の関係というのはほとんど知られてないと思うんですよね。われわれは弁護士として事件でやっているのでこういう今発表いただいたような問題もありますし、『患者は麻酔で殺される』という本を書かれたアサノ先生だったかな、あの方も自分は責任を認めているけれども医師会が駄目だって、「払うんだったらおまえが払え」と言われるので、裁判、偽証したということも載っていましたので、やっぱりこれマスコミ等に非常にアピールしていくことが非常に重要で医師会を説得するのはちょっとなかなか難しいと思うので、そういう方面で運動していけばいいんじゃないかと私は思いました。以上です。
【司会】ありがとうございました。では堀さん、これで発言最後にしたいと思います。
【堀】先日訴訟の相手方の代理人と保険がどうなっているんだという話を雑談で聞いたんですけれども、その際に出た話が日本でいろんな医師側の保険があるわけですけれども、患者さんの被害に対してひきあてとなる金額というのは全部合わせてもだいたい300億円ぐらいかなあなんていう話をしていました。歳出根拠はお医者さんの数とだいたい1人あたま年間5万円ぐらいの保険料を払っている、そこらへんから推計していくとせいぜいそれぐらい。数百億円のオーダーを超えないという話だったんで、聞いてみればそのとおりなんですけれども、ちょっと愕然としました。
交通事故の場合だったらいくらあるかというとたぶん桁が2つぐらいは違うはずで、そのあたりの事実をもっとアピールしていって、そもそもファンドとして全然たりないんだ。そのためにお医者さんの側も事故が起きたときに支払いを受けることができず困っておるということをもっとアピールすべきじゃないかと感じました。以上です。
【司会】ありがとうございました。仙台のほうでこの問題を全国的に展開しようという力強いおことばを先ほどいただいたんですが、これは坂野先生が幹事ということでよろしゅうございますか? (坂野先生うなずく)ということだそうですので、全国でぜひ議論を深めて大きな運動にしていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。
(終わり)
アンケート結果
1、示談の申入れをした場合に日本医師会の審査会の結論が出るまで示談交渉は出来ないと言われたケースはありますか。
・ある 但し裁判所(地裁一審)の和解の場です。
・ある 医師会の場合は全例。
・ある 大半がこれ。
・ある (表現は審査会の結論が出るまで待って欲しい)
・多くのケースで「日本医師会の審査会の結論が出るまで申入書に対する回答を待って下さい。」と言われています。
・「日本医師会の審査に回したので、訴訟前の示談には応じられない」と回答され、やむなく訴訟提起。
・前の事務所の事件で、調停の際に相手方に言われました。
・ほとんどがそう。逆に当初から依頼者に対しその旨説明している。
2、1のようなケースがあったとして、審査会の結論が出るまでにどの位の期間を要しましたか。
・約2ヶ月程度。
・数ヶ月から1年近くまで。
・3ヶ月から半年。
・3ヶ月から1年。
・4ヶ月。
・半年程。
・7ヶ月
・3ヶ月から1年半。
・半年から1年。
・1年前後。
・6ヶ月から約2年。
・示談を打ち切って提訴した。
・待たずに提訴したので、その時点で審理はストップしたらしい。
・聞くところによると8ヶ月位かかるとのことだが、交渉申入時に既に審査中の事が多く、数ヵ月待たされたことはあるが、長期間待たされたことはない。
・1年経って、当職が独立するときにも、結論はでませんでした。
3、審査会の有責、無責の結論についての理由の説明はありましたか。
・あるものとないものがある。
・一切なし
・かなり個人的な対応として口頭で簡単にあり。
・代理人が事実上ついている場合に結論は明示しないまま、問題となっている論点について説明を受け、それに反論したことはある。
・理由は明らかに出来ないとのことだった。
・理由の説明なし。
・さんざん交渉してごく簡単に説明させたことがある。
・簡単な説明がありました。
・口頭での簡単な説明であることが多いです。
・簡単なもの(過失がない)はあるが、詳しいものはない。
4、理由の説明を求めた事はありますか。
・無責回答に対し、詳細なコメントを求めたが、拒否。
(というより説明を審査会から開かされていないので説明は出来ないとの説明)
・無責の回答があったら直ちに提訴しているし、有責の回答だったら示談金の話になっていく。
・内々に相手方代理人が口頭で伝えてくることあり。
・有責の結論の場合はなし。証拠保全から委任し交渉したケースで無責の経験はない。
無責の結論が出た後で受任したケースがあるが、(今後ではあるが)説明を求めるつもりである。
・抽象的に「因果関係はなし」という程度。
・岡山県医師会の顧問弁護士に説明を求めたが、日本医師会が答えないので顧問弁護士も説明出来なかった。
・説明を求めた事はあるが、相手方代理人自身が十分その理由を承知していなかった
・文書で回答するよう求めたが、理由は明らかに出来ないとの事だった。
・口頭で説明を求めましたが、理由の説明はできないとのことでした。
・いつも理由の説明は求めています。口頭での簡単な説明にとどまることが多いようです。但し、中には相手方代理人と踏み込んだ議論をしたこともあります。文書で回答をくださるよう現在もお願いしています。
・説明を求めた事はあるが、明確な説明はない。
・求めても説明はなかった。
・訴訟終了後(有責前提の和解成立後)、日医に質問状を提出したが、回答なし。
・死亡との因果関係を問題にしているとのこと。
・説明を求めたことはあるが、医師会の顧問弁護士も「結論しか聞かされていないので分からない」と答えられた。
5、審査会の結論が早く出るよう何か工夫している事があればご教示下さい。
・かなり期日がたったところで相手方代理人への申し入れ(催促)
・「提訴する」の一言が効く事がある程度
・事実上医師側の代理人になると思われる弁護士に事前に早期処理を求め、あるいは早めに調停申立をするなど。
(直接医師側の担当者に督促したケースもある)
・書面で督促。
・審査会が開かれる回数が月に何回と決まっているので、仕方ないと弁護士から言われて以来、弁護士に再々問い合わせる位しかしていない。
・調停申立をして急がせる
・特にないが、相手方代理人(弁護士)がついていたので「早く」と毎月のように連絡を入れていた。
・時々担当者に電話を入れて早くして欲しいと催促する。
(が、効果はほとんどない。)
・定期的に病院の代理人に経過報告を求めている。
・代理人弁護士をつつく。
・医師会側の審査のシステムが全く分からないので工夫のしようがない。ただ、有責回答を前提として逸失利益算定のための具体的資料の提出を病院側代理人から求められたことはある。
・特にはありませんが、担当の弁護士を確認した上で当該弁護士に再三催促はしています。
・顧問弁護士に再三FAXで請求をしています。
・できるだけ詳細な(訴状としうるような)申入書と参考文献を添付、前医、後医にあたる医療機関がある場合には、その診療記録の写しを提供する(後遺症診断書類、解剖所見録などがあれば必ず写しを添付する)等の努力はしています。但し、それが審 査会の結論を早く出す工夫になっているかは分かりません。
・医師会への催促。
・頻繁に催促すること位。
・独立間際に訴訟を起こしました。
・相手方かその代理人を通して催促する事位。
・特にないが、依頼者に事前にその旨説明しておくこと位。
・医師会事務局に催促したことはあるが、効果があったかは不明。
6、審査会の判断に患者側の意見が反映されるよう何か工夫している事があればご教示下さい。
・内容証明郵便に事実関係、責任原因をなるべく詳細に記載し、審査の資料とする。
・申入内容証明分の掘り下げ。(すぐ訴状に使えるようなものを目標に)
・内容証明による請求書で、医学的根拠を詳細に記載する。(協力医がバックいることを推知させる)
・審査にかかってしまったと分かれば、一応意見書等は出すことにしている。
・内容証明郵便は過失認定に結びつく細かい点となるべく丁寧に記載した詳しい内容のものを送っている。
・意見書を提出している。意見書は訴状とほぼ同一とし、詳細な主張を証拠(文献等)を引用して記載している。
・相手弁護士に対し意見書を提出し、審査会判断の資料とするように依頼する。
・かつては当方の意見書を提出の上、面接を申し入れて説明したりもしていたが、
対席構造でもなく、相手側(医療機関側)の主張も分からないので、どんな虚偽の報告をされても反論の仕様がない。空しい限りであるので最近は何もしていない。
・証拠保全後日、損害賠償請求書を訴状並に充実させ、有責であることを具体的に明確にするよう努めている。
・医師側からどのような意見や資料が出ているのか、審査会でどのような意見が出ているのか開示してもらいたい。
・医療機関の対応があまりに不誠実な場合などには患者、遺族本人の手紙を別送したりしています。
・病院側が審査会に記録を送付する際に患者側の意見書も出せるようにすべきではないか。
・日医のケースではないが、保険会社に対して意見書を提出している。(訴状とほぼ同じ内容で)
・損害額の資料提供は時々あるが、それ以上のものはあまりない。だいたいはこちらの主張は既に交渉申し入れのない文書で病院に行っているので、それが渡っていれば特 に必要ない限り出していない。
・最近は特に何もしていない、所詮、医師側の利益擁護機関。
・申し入れ時に患者の意見をできるだけ記載している。
・特にない。現状では無効と思われるから。
・神奈川の例では、まず医師会の担当理事と話す機会があった。
7、相手方医師が過失を認めているにも関わらず、審査会の結論が無責であったために示談が成立しなかった(あるいは示談交渉自体出来なかった)ケースはありますか。
・一審で原告勝訴の判決がなされ病院もこれに従って和解したがっていたが当初の審査会の結論が無責という理由で医師会の意向で控訴されたケースがある。
・逆に医師が拒んだケースがあった
・相手Drは内心は責任を認めているのだから、審査会の判断の出るまで「有責」とは言わないのが現状と思われる。
・市医師会が有責意見にも関わらず、日医の審査会では無責ということがあった。
・ある このため、3件提訴し、うち1件は裁判上の和解で解決したが、他の2件は未だに係属中。
・当事者間の話し合いでは医師が謝罪をされ、当然有責との結論が出ると思われた事例で無責の回答があり、医師も話合い出来ないとされたケースがあります。その後、研 究会に証拠保全の依頼がありました。
・過失を認めたと明確に言えるものはありませんが、保全で解決したい様子の相手はおりました。
・「個人としては何とかしたいけれども」というケースはあった。
・ない。逆に医師が認めると認められる方向であるという感じがある。
8、その他医師賠償責任保険について問題と思われるケースがありましたらご教示下さい。
・東京周辺では東京都医師会の案件が特に問題であると感じる。
(1)結論が出るまでに長く待たせる。
(2)理由を示さない。
(3)患者側の意見を聞く体制がない。
審査会の結論を待つよりも、訴訟を提起して、その中で解決した方が早いと感じている。
・審査の方法、内容が全く不明。有責の場合も、医師側代理人に根拠の呈示はなく、金額のみと聞いている。従って、金額の根拠の説明も受けられない。
・有責、無責の判断基準が医師側代理人の理解とかなり相違している。
・交通事故に比べ、有責範囲が厳格すぎる。
・患者本人が直接医師と交渉したケースでは、患者本人に全く手続きについての説明をしないまま無責の結論が出されている。(患者側が全く手続きに関与しない密室で行われるため、結論に至る経過が検証できない。事後の説明もない。)
・事実上7000万円を支払い最高限度としている。
・保険の限度額と賠償責任の範囲とは違うと思うのに、相手方は「保険でこれだけしかないから」という発言として責任範囲(金額)を下げようとするのは本末転倒だと思 う。
・被害者の直接請求できる道がなく、保険会社の認定と医師会の審査会の関係が今ひとつよく分からない。被害者側の弁護士の意見を直接聞く機会くらいは設けて欲しい。
・産科分野では、児が死亡しているケースは比較的保険による解決を示してくれるが、 生存していて要介護の場合(生死までの経過はよく似ていて、過失の有無も大差がなくても)示談交渉できず、裁判提起せざるを得ない。
・保険審査の段階で患者側意見を積極的に聴くようなシステムが必要ではないでしょうか。
・私が示談交渉したケースで相手方弁護士の話では、「医師賠償責任保険」の適用の前提として過失の有無の判断が出る前に医師が過失を患者に認めた時には、あるいは、過失を認めて見舞金を支払っているときには、保険の対象外となってしまう(そのケ ースでは、まさに見舞金を支払っていたので、それはなかったことにしてくれ、との依頼があり、そのような対応を当方側がした。)との説明であった。これでは過失を認める医師が現実には患者に対して誠実な対応ができなくなるので、極めて問題であると痛感した。
・審査会の運営実体が全く不明。月に1~2回程度の審査会の開催と聞くが、全回での案件にたいして極めて不十分だろう。審査会の事務局に直接問い合わせが出きる事は 最低必要と思われるが、その事務局窓口すら明らかではない。こんな審査会が判断を 下す医師賠償責任保険など潰すべきでしょう。
・病院が賠償保険に入っておらず、銀行から借りるまで支払いを待っている。
・有責と認めながら、賠償基準を不当に低いものを呈示した。加害医師が自己負担した上で和解に至った。
・被害者側の主張や根拠をHearingする機会がないこと。
・有責の判断がなされたが、金額が低くて示談に至らず、提訴したら責任原因を争われ鑑定申請までされたことがある。翻意の理由として有責ではないが示談で解決できるなら提示額を払うつもりだったが、訴訟で解決する以上は責任範囲を争うというよう な事を主張されている。
・保険の上限が1億円であるため、例えば重度の後遺障害が残ったため、介護費用等で1億円を越える賠償額となる場合、なかなか和解が成立しない。(責任は事実上争いがないにも関わらず)というケースがある。
・担当医が「どうせ保険から支払われるから」と発言しているケース。被害者としては到底納得できない。交通事故の一部事案と同様のモラルハザードが広がっているように思う。
・近年、医賠責を担当する保健会社の選任する弁護士が医療機関側代理人として登場するケースが増えているのではないか。そのため、保険会社主導の解決に傾きがちな(被告代理人が保険会社を説得出来ない)ケースが増えているのではないか。
・賠償認定額が低いのではないか。
・和解では、裁判所の和解勧告が障害5級の勧告で5500万円の妥協額だったのに、保険側は障害12級で2500万円の支出という回答でした。余後の治療で障害が拡 大した(これは医学的やむを得ないものでした)ため、拡大部分に責任なしとしたことによります。結局病院が自腹を切って、早期解決しましたが、裁判上の勧告すら無視する保険では、意味がないと思います。
・平成6年頃、小生、医療過誤事件初体験で保険制度の仕組みも知らなかった。依頼者(亡夫の妻は元婦長まで勤めた看護婦のOG)の話の内容から示談可能ではないかと考え、相手方医師に話し合いを申し入れたところ、医師側として経験豊富な弁護士より賠償責任の仕組みと日本医師会の審査で過失ありと認めることはあり得ないので(申し訳ないが)訴訟起こしてくれと言われた。訴訟提起(H7年)。
別の問題だが、鑑定に1年10ヶ月位かかり(鑑定人探しから2年余り)、最近漸く、結審の見込みとなった。(ともかく時間がかかる。途中裁判官の交替もあった。)
・自動車保険にもいえることだが、被害者側に請求を断念させる役割をもっている。
・何となく医師賠償保険金額の上限は「1億円」と聞かされているが、働き盛りの事業経営者等が死亡したり、重度後遺症となった場合、あくまでも1億円にこだわり和解をしているのかどうか知りたい。
・有責を認めながら賠償基準を不当に低いものを呈示した。加害医師が自己負担した上で和解に至った。
・顧問弁護士をつとめている整形外科病院のミスの件。日医A会員である医師はミスを認めていたが、兵庫県医師会の顧問弁護士がミスでないとのこと。私とすれば顧問先の意向によりミスを認めて保険適用してもらうべく尽力したが、県医=日医の顧問弁 護士があくまで反対したので、保険によらずに示談交渉して被害弁償をした。日医会側の硬直した態度の為に結局保障は何の為に存しているのか分からないという例であった。
・有責の結論が出ているケースで依頼者が相手方医師本人から医療事故発生の原因など事実関係について説明を聞きたいと強く希望している。 (訴訟までするつもりはなく、とにかく医師本人から説明を聞きたい)のに、「裁判を前提にして証拠保全をした以上、説明は訴訟の場でする」との頑なな態度を崩さない医師会の対応は非常に問題である。診療契約に基づく報告(説明)義務は証拠保全されれば消滅するという理屈は 成り立たないはず。(このケースは代理人が医師会と電話、面談で交渉を繰り返し、最終的には医師への質問事項を書いた書面を医師会経由で当該医師に交付し、医師本人が回答を書いて署名、押印し、医師会経由で回答を受領するということになった。依頼者は医師本人から回答があったことで気持ちの整理がついた。)
・保障期間が事故時点に医師会員であることではなく、請求を受けた時点に同会員であることとされていること。事故発生後に退会すると保障の適用がない。
・金額の査定が保険会社に一任されており、低額に抑えられる事が多いこと。
・時間がかかりすぎる。
・判断結果に至る過程が明らかにされていない。
・保険の運用が苦しいため、支払いを渋る傾向にあると聞く。保険料をUPして支払うべき被害者には迅速に相当な額を支払うべき。
・当番制の担当Drが、患者側と直接交渉にあたるので、後日トラブルが生じやすいように思われる。
・協力医6人が有責判断をしているケースでも、審査会では無責の結論を出している。しかも有責前提の和解勧告を受け入れているケース。
審査会の存在が早期救済を妨げている。審査会のあり方、判断過程そのものに問題があり、と言わざるを得ない。
・賠償提示額が低い。
・裁判となった場合に保険会社(又はその代理人弁護士)が頑張りすぎ、不当な結果となることが多いこと。(医師もある程度責任を感じている様子なのに裁判官の無知に 付け込み勝訴判決をかすめとる)
・保険会社の医師向けパンフレット(医療過誤の訴えがあった場合の対処法)内容が不適切なため(隠す方向の対応を進めている)、無用の紛争を生んでいること。
・賠償金額が交通事故の場合に比べ、低額であること(責任の度合いに応じさせているのかもしれないが)
・カルテのどこをどう見ても病院側の過失が明白なのに、無責回答となって判決となり 被告側医師の証人尋問で事実上過失を認めているのに、尚、被告病院(鹿児島医師会病院)が和解のテーブルにつこうとしないケースがある。
日本医師会医師賠償責任保険に関する公開質問状
平成13年6月12日
社団法人日本医師会 会長殿
仙台医療問題研究会
代 表 弁護士 増 田 祥
事務局長 弁護士 坂 野 智 憲
別紙目録記載研究会・弁護団
1、日本医師会医師賠償責任保険(日医医賠責保険)制度の概要
① 日医医賠責保険は、社団法人日本医師会を保険契約者として損害保険会社5社(東京海上=幹事会社、安田火災、大正海上、日本火災、住友海上)との間で締結される。被保険者は日医A1会員とA2会員。保険期間1年間、年間填補限度額1被保険者につき1億円。免責100万円。
② 医療事故が起こり患者側から損害賠償請求(文書口頭問わず)を受けた場合は、事故から紛争に至った経緯を「事故報告書」として作成し、所属郡市区医師会を通じて都道府県医師会に提出。
都道府県医師会は事故調査の結果に基づき、日医医賠責保険の紛争処理手続に委ねるか否かを決定する。都道府県医師会は当該事案につき請求額が100万円を超えると予想される場合には、日医医賠責保険の紛争処理手続に委ねる決定をなし、一件書類を作成の上日本医師会へ「付託」する。
「付託」された事案は「日医医賠責保険」制度の中の「調査委員会」の調査・検討を経て、中立公正な判定機構としての「日本医師会医師賠償責任審査会」に上程され、その審査結果に基づいた処理方針が日本医師会から都道府県医師会に通知される。
③ 本制度上の制約
会員独自の判断や所属郡市区医師会・都道府県医師会の判断で勝手に患者側に「賠償金」(見舞金と称しても同様)、「治療費、生活費等」の支払をしたり、あるいはこれらの支払を約束した事案については、その約束が口頭であれ、念書・示談書・和解書によるものであれ、付託されても日医医賠責保険の適用はない。
賠償責任審査会の審査結果に基づいた処理方針が都道府県医師会へ通知される前に同様な支払や約束がなされた場合も、日医医賠責保険の適用はない。
訴訟事件などの経過は絶えず都道府県医師会に報告し、医師に不利な鑑定書の提出、職権による和解勧告、敗訴判決など重要な転機を迎えたときは、遅滞なく所属都道府県医師会を通じてその都度日医の指示(処理方針)を受ける必要がある。
④ 弁護士の選任
都道府県医師会・日本医師会・保険会社の三者協議により各事件ごとに弁護士の選任を行う。弁護士の通常の諸費用・報酬は日医医賠責保険で認める範囲で保険金として支払われる。
会員が自分で弁護士を選任することはできるが、医賠責等の保険によるカバーを期待する場合は、予め弁護士の選任について医師会と保険会社に相談し同意を得ることが必要。保険者の指示に従って交渉しない限り保険金は給付されない。独自に依頼した場合はその弁護士費用は保険からは給付されない。
2、運用状況
未確認情報であるが、平成4年は256件が審査会にかけられ、支払額(但し予算規模)が34億5000万円、平成9年の支払額は約60億円とのこと。
3、問題点
① 医師の作成する「事故報告書」、都道府県医師会の作成する「一件書類」の内容が一切明らかにされず、被害者側の意見が反映されない。被害者側で意見書や資料を出してもそれがどのように扱われるのか不明。
② 調査委員会がどのようなメンバーによって構成され、どのような方法で調査・検討されているのか不明。被害者側の意見、資料の提出の機会がない。
③ 賠償責任審査会の構成が不明(医師6名法律家4名で構成されると言われている)。審査方法が不明で被害者側の意見、資料の提出の機会がない。
④ 賠償責任審査会の審査期間は数ヶ月から2年かかる。
⑤ 審査結果は有責、無責の形でしか知らされない。理由を聞いても答えないか、過失なし、因果関係なしとの抽象的なもの。医師会の顧問弁護士にも詳しい理由は知らされない。
⑥ 審査会の結果が出て日本医師会から処理方針が通知されるまでは賠償金などの支払い約束ができないためそれまでは事実上示談交渉自体不可能となっている。
⑦ 請求額100万円を超える案件は、全て日医医賠責保険の紛争処理手続に委ねる決定をしなければならず、被保険者ないし都道府県医師会の判断で処理することが不可能となっている。
⑧ 日本医師会の処理方針に反する合意の場合は保険金は支払われないため、被保険者が過失を認めている場合でも被保険者ないし都道府県医師会の判断で示談することが不可能となっている。
仮に有責の結論が出ても日本医師会の決めた金額以外の示談はできないことになっている。これは裁判所の職権和解の勧告があった場合でも同じ。
⑨ 敗訴判決があっても控訴するか否かは日本医師会が決める。
⑩ 医療事故を起こした医師が責任ありと考えている場合には、医師自身医師賠償責任保険による早期解決を望んでいるが、現実には医師がそのように望んでも医師賠償責任保険の制度自体が早期解決を阻害する構造となっている。
4、質問事項
① 医師が「事故報告書」を、都道府県医師会が「一件書類」を作成するに当たり、被害者側の意見聴取、資料提出の機会は保障されているのか。
保障されていないとして今後運用を改善するつもりはあるのか。
② 調査委員会はどのようなメンバーによって構成され、どのような方法で調査・検討されているのか。
調査委員会の調査の過程で被害者側の意見聴取、資料提出の機会は保障されているのか。
保障されていないとして今後運用を改善するつもりはあるのか。
③ 賠償責任審査会はどのようなメンバーで構成され、どのような方法で審査がなされているのか。
審査に当たり被害者側の意見聴取、資料提出の機会は保障されているのか。
保障されていないとして今後運用を改善するつもりはあるのか。
④ 賠償責任審査会の審査期間はどの程度か。統計資料があれば開示されたい。
⑤ 審査結果はどのような形で医師ないし医師会に告知されるのか。有責・無責の理由は告知されるのか。賠償金の金額も決定しているのか。
有責・無責の理由が告知されているとして、それを被害者側に開示しても差し支えないとされているのか。
被害者側から請求があった場合審査結果及びその理由の開示を受けられるのか。
受けられないとして今後運用を改善するつもりはあるのか。
審査結果(氏名などプライバシー事項は除く)を国、地方自治体、学会、医療機関などに開示し、あるいは広く国民が情報を得られるよう刊行物として公刊するなどして医療事故防止に役立てようという考えはないのか。
⑥ 請求額100万円を超える案件は、全て日医医賠責保険の紛争処理手続に委ねる決定をしなければならず、審査会の結果が出て日本医師会から処理方針が通知されるまで事実上示談交渉自体不可能な制度となっているが、そのような運用をしている理由は何か。
審査会の結果いかんに関わらず当該医師の責任において示談交渉をなしその結果によって保険金を支払うなどの運用に変更するつもりはあるか。
⑦ 審査の結果有責の結論が出ても日本医師会の決めた金額以外の示談はできないことになっているようであるがそのような運用をしている理由は何か。
今後賠償金額の決定は当該医師ないし単位医師会に委ねるなど運用を改善するつもりはあるのか。
⑧ 裁判所の職権和解の勧告があった場合でも日本医師会が決定した賠償額以上の金額での和解はできないことになっているのか。
そうだとしてそのような運用をしている理由は何か。
今後運用を改善するつもりはあるか。
⑨ 医師側敗訴判決があっても控訴するか否かは日本医師会が決めることになっているのか。
そうだとしてそのような運用をしている理由は何か。
今後運用を改善するつもりはあるか。
⑩ 医師賠償責任保険の運用実態(年間付託件数、有責・無責の割合、年間支払保険金額、1事故当たりの平均保険金支払額、年間予算額などの統計資料)を明らかにされたい。
医療問題研究会・弁護団目録
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