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医療過誤解決事例報告

超音波内視鏡検査時の食道挿管により遷延性意識障害に至った事案

相手方 地方自治体(公立病院における医療過誤)
平成29年11月10日 示談成立。

(1)事案の概要
患者は6歳の児童。
心房中隔欠損症のため相手方病院を受診。
経食道エコー検査のため全身麻酔を行い、挿管開始するも喉頭展開不十分で挿管できず,検査中にspo280%後半まで低下。2回目も挿管できずspo270%台まで低下。mask&bagで換気を継続。その後心臓マッサージを開始するもspo2の低下は継続したため,検査は中止。担当医は児童の家族に対し,その原因について,挿管チューブの刺激や、肺高血圧発作が考えられると説明。
MRI上,脳萎縮あり。現在も相手方病院に入院中で遷延性意識障害の状態。

(2)主張
①日本麻酔科学会の発行する「安全な麻酔のためのモニタ一指針」においては,「麻酔中の患者の安全を維持確保するため・・・全身麻酔ではカプノメータを装着すること。」とされている。したがって,本件においても経食道エコーに際し,カプノメータを装着させる義務があったが,これを怠った過失がある。
②本件では胃チューブが挿入されていたにも関わらずに腹部が膨らんでおり,また胃泡音が聞こえたことから、気管チューブを入れ替えたとされている。しかし,これらの所見は実際に確認が行われた時点よりも早期に出現していたはずである。担当医は,挿管直後から不確実な聴診しか行っておらず,これにより11分もの間食道挿管に気付かなかった過失がある。

(3)争点
①全身麻酔時のカプノメーターの使用が医療水準にあたるか,②検査中のspo2低下の原因・食道挿管となった時期,③聴診の実施態様,④損害額等

(4)結果
9000万円で示談成立。