裁判上の和解成立
患者:0歳、女性
医療機関:公立病院(米沢市立病院)
【事案の経過】
2015年(平成27年)
12月25日 原告母が米沢市立病院を受診する
その後の受診において、胎児発育不全傾向にあるため、帝王切開の可能性があることを主治医に説明される
2016年(平成28年)
1月11日 原告母が分娩のため米沢市立病院に入院する
1月12日 午前0時半ないし午前1時ころから、胎児心拍数モニターにおいて異常波形が見られ始める
午前3時ないし午前4時ころまで胎児心拍数モニターにおいて波形レベル4ないし5の異常波形が繰り返し出現する
午前4時12分 助産師が主治医に緊急来棟を要請する
午前4時30分 主治医が来棟
午前5時14分 主治医が緊急帝王切開を決定する
午前6時15分 緊急帝王切開により原告子が出生する
午前7時45分 原告子が新生児特定集中治療室のある山形済生病院に緊急搬送され、その後、重症新生児仮死、多発脳出血と診断される
午後5時40分 主治医が原告父母に面会し謝罪する
3月1日 原告父母と面会した主治医が「夜に生まれる子はそうなる」などと責任を否定するような発言を行う
6月7日 米沢市立病院にて証拠保全を行う
8月18日 原告父母が仙台弁護士会に示談あっせん(ADR)申立てを行うが、被告が応諾しなかったため、不成立に終わる
2016年(平成28年)
10月26日 山形地裁に損害賠償請求訴訟を提起、請求額は約2億円
原告の主張:胎児心拍の異常波形を確認した時点で緊急帝王切開術をすべきであったがこれをしなかった過失がある。
被告の主張:①本件分娩はハイリスク分娩ではない、②胎児心拍数モニターにおいて、原告が主張するような異常波形は認められない(波形レベルの評価)、③原告子の脳性麻痺は胎児低酸素血症によるものではない(因果関係がない)
2020年(令和2年)
2月18日 原告父母、主治医、助産師の尋問が行われる
被告が鑑定申立ての意向を示し、原告側もこれに応じる。
2021年(令和3年)
5月28日 裁判所が委嘱した鑑定医の鑑定書が出される。全面的に病院側の責任を認める内容。すなわち、①本件分娩がハイリスク分娩であることを前提に、②午前0時半ないし午前1時ころから胎児心拍数モニターにおいて異常波形が認められていたので、この時点で助産師が主治医に来棟を要請しなかったのは不適切であった、③主治医が遅くとも午前4時ころまで帝王切開を決定しなかったのは不適切だった、④原告子の脳性麻痺は胎児低酸素血症によるものである(因果関係あり)といった内容
9月17日 裁判所から原告勝訴を前提とした和解案が出る。賠償額は1億5200万円
双方当事者が裁判所和解案に応じる方向で調整が進む
12月15日 原告子が肺炎により死亡
和解協議が再開される
2022年(令和4年)
4月28日 裁判所和解案が示される。賠償額は8611万6392円
双方当事者が裁判所和解案に応じる方向で調整が進む
6月28日 和解成立(被告が原告らに対し損害賠償として9931万6392円の支払義務を認める内容。)