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最高裁医療過誤判例分析

医療慣行と薬剤の添付文書に関する判例3

(1)判決日等
H16.9.7
判時1880
P64~

(2)発生時期等
H2.8
57歳男性

(3)事例
看護師から点滴により抗生剤の投与を受けた患者が投与開始直後にアナフィラキシーショックを発症して死亡した場合において医師にあらかじめ看護師に対し投与後の経過観察を十分に行うこと等の指示等をすべき注意義務を怠った過失があるとされた事例。

S状結腸がん除去手術後,ペントシリン,ミノマイシン静注。
開始後経過観察を行わずに看護師退室,数分後,ショック症状発現。
急性循環不全により死亡。

(4)争点
抗生剤の静脈注射にあたっての医師の注意義務。
(観察義務違反の有無)

(5)内容
薬物等にアレルギー反応を起こしやすい体質である旨の申告をしているAに対し,アナフィラキシーショック症状を引き起こす可能性のある本件各薬剤を新たに投与するに際しては,医師には,その発症の可能性があることを予見し,その発症に備えて,あらかじめ,担当の看護師に対し,投与後の経過観察を十分に行うこと等の指示をするほか,発症後における迅速かつ的確な救急処置を執り得るような医療体制に関する指示,連絡をしておくべき注意義務がある。医師がこのような指示を何らしないで,本件各薬剤の投与を担当看護師に指示したことにつき,上記注意義務を怠った過失がある。