平成21年3月示談成立
患者 男性 70歳代
医療機関 ××県予防医学協会
事案の概要
平成19年8月、市が委託している××県予防医学協会の一日人間ドック検診を受診。胃部レントゲン検査を受け同年9月に結果報告がきたが結果は異常なし(判定a)。同年12月近医受診、超音波検査で肝腫瘍指摘され、県立病院紹介。同病院で胃内視鏡検査、胃癌(タイプⅢ)、肝転移ありⅣ期で手術不能と診断。抗がん剤治療の目的で平成20年1月××医療センター転院。同年9月胃癌で死亡。
コメント
平成19年8月の胃透視造影写真を読影すると、胃前庭部大彎部のふくらみが不良で、同部に不正な隆起性変化が認められる。これはボールマン3型のT2の胃癌が疑われる所見。リンパ節転移や肝転移の有無は確認できないが、N0ならⅠB期、N1ならⅡ期、N2ならⅢA期、M1ならⅣ期となる。治療はⅢ期までなら定型手術、Ⅳ期なら拡大手術+化学療法。5年生存率はⅠB期87%、Ⅱ期68.3%、ⅢA期50.1%、Ⅳ期16.6%。12月の時点で肝転移が見られるので8月の時点でもリンパ節転移はあったと考えられるがその程度、肝転移の有無は不明。結論として胃透視造影で胃癌を発見し得たことは明らかで協会に過失があるが、その時点で手術を行った場合に救命し得た高度の蓋然性があったかは不明。しかしこの時点でⅡ期ないしⅢA期であった可能性は否定できない。従って本件では少なくとも相当程度の救命可能性はあったと言える。
協会は一切争わず、請求額に近い600万円で示談成立。