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医療過誤解決事例報告

イレウスを見落とされエンドトキシンショックで死亡した事案

平成21年5月示談成立
患者   女性 60歳代
医療機関 民間総合病院
事案の概要
1 平成19年6月18日急激な腹痛と嘔吐。救急車で相手方病院受診。腹痛、背部痛認める、腹部soft・flat、腫瘍(-)、圧痛(+)、手術痕(+)。急性腹症の診断で、腹部X-P、腹部CT施行。造影CTで大動脈解離は否定的。保存的治療とし今後精査。ICU入室後、腹痛スケール5、ペンタジン点滴するも痛み不変。
2 6月19日、腹痛、身の置き場がなく体動激しい。グル音++、腹満なし、全体に圧痛、筋性防御(-)。エコーで肝右葉、左葉に血管腫あり、上行結腸憩室あり。腹部所見ではCT上憩室の部位に圧痛強い。排便は昨日1回あるもその後なし、本日排ガスなし。6月20日、痛くて眠れない、振戦みられ体動激しい、スケール3~4、ペンタジン1A。全体の圧痛の訴えあり。6月21日、腹部症状はfocusのはっきりしない圧痛。6月22日、水分のみ可、圧痛(+)筋性防御(-)腹満(+)、嘔吐(++)。 痛い、体動激しく身の置き所がない。
3 6月23日、緑色痰様の嘔吐少量あり、その後も少量ずつ嘔吐しているため腹部立位および仰臥位写真と腹部CT撮影。ニボー像著明。イレウスと診断しイレウス管挿入。6月24日朝、BP60、脈圧弱く、排液(イレウス管)1050?、尿量200?(日勤帯合計)。極度の脱水と考えられる。午後心停止、蘇生処置。
4 6月25日、腹腔内で腸管壊死の可能性が高く、手術以外の方法が無い、多臓器障害認められ手術のリスクは非常に高いが手術を行う。手術記録「回腸端から約20cmの小腸が約30~40cmにわたり骨盤内(卵巣腫瘍OPの後)に落ち込み癒着し、絞扼あり、壊死。壊死部口側約130~140cmの小腸は暗赤色のまま色調もどらないため切除の方針とし、小腸壊死部分、血流障害部分の小腸計約180cmを切除、全身状態悪いため腸吻合はリスクが高いと判断して小腸瘻とした」
5 9月1日死亡
争点
1 6月23日より前に立位(座位・側臥位)レントゲン撮影をすべきだったか
2 6月24日にプレショック状態になった時点で緊急開腹手術を行うべきだったか
コメント
 イレウスの三徴は腹痛、嘔吐、排ガス停止だが、初診時、腹痛と嘔吐があり、腹部所見としては圧痛(++)筋性防御(-)グル音(++)腹満(+)、この時のカルテには排ガスの有無について記載がないが6月19日になって「昨日は便あり、本日排便排ガスなし」の記述ありこの時点でイレウスの三徴はそろった。急性腹症としては患者の場合、①イレウス②消化管潰瘍穿孔③急性虫垂炎④急性膵炎が考えられるが、それまでの臨床所見とCT、血液検査所見からは②③④は除外される。19日の時点では繰り返しペンタジンを投与してもなお激しい腹痛が持続しており、イレウスが残るのみであった。救急外来で撮影された腹部X線写真は仰臥位での撮影であり、立位での撮影ではなかった。急性腹症の診断は腹部立位単純写真を撮影してニボーの有無の確認からおこなうのが鉄則であるのに相手方病院は救急医療の手順を守らず、6月23日になってようやく腹部立位撮影を行いニボーが確認されてイレウスと診断された。この点でイレウスの早期診断を怠った過失がある。本件では19日の時点でイレウス管を挿入すれば保存的治療で治癒できたと思われる。24日にプレショック状態となってからの処置も遅すぎる。既に発症後6日を経過しており保存的治療はあきらめて緊急開腹手術を行うべきであった。
 交渉では相手方代理人はイレウスの診断の遅れは争ったが、プレショック状態に至った後の対応の遅れを認めた。交渉の結果、解決金2950万円と再発防止の約束、院長の謝罪の書面提出で示談することになった。