坂野法律事務所|仙台|弁護士|

【営業時間】平日09:00〜17:00
022-211-5624

医療過誤解決事例報告

大腸癌手術に伴い尿管を損傷した事案

相手方 私立総合病院
平成30年1月31日 調停成立。

(1)事案の概要
患者は40代女性。
平成27年2月,下行結腸癌と診断され,同年3月5日,相手方病院において腹腔鏡補助下左半結腸切除術を受けた。その際の止血デバイス操作によって晩発性左尿管損傷が生じた。損傷部が自然閉鎖したためにされ,尿路の通過障害が生じ左水腎症となった。水腎症が発覚したのは,上記手術から約2ヶ月後の同年4月28日。この頃には,尿管再建術は困難であり,患者は腎瘻造設を余儀なくされた。

(2)主張
①腹腔鏡補助結腸切除術における合併症としての尿管損傷の頻度は極めて低い。ことに本件手術部位である下行結腸は比較的視野が確保しやすいのでなおさら頻度は低い。そのため,腹腔鏡補助結腸切除術によって尿管損傷が起きた場合は、患者の尿路走行が通常と著しく異なっていたなどの尿管損傷が不可避であった事情を具体的に説明できない限り、手技の誤りが推定される。
相手方病院担当医には、本件腹腔鏡下大腸癌手術において患者の尿管を損傷しないようその位置を確認しつつ慎重に摘出手術を行うべき注意義務があり,これを怠った過失がある。
②仮に上記①の手技上の過失が否定されるとしても,本件では術後のクレアチニン値の上昇が継続的に認められているのであるから、何らかの原因による腎機能低下を疑う。腹腔鏡補助下左半結腸切除術は尿管損傷の危険性のある手術であるから当然尿管損傷は鑑別診断の対象となる。したがって相手方病院担当医は尿管損傷を疑って、患者を退院させる前に経静脈性尿路造影や、逆行性尿道造影を行い尿管損傷の有無を確認すべき注意義務があり,これを怠った過失がある。

(3)争点
①腹腔鏡補助下行結腸切除術における合併症としての尿管損傷の頻度や,手技の工夫方法等に鑑み,手技の誤りは推認されるか,②術後クレアチニン値の上昇に鑑み,腎機能を低下させる要因として尿管損傷を確認すべき義務の有無,③尿管損傷後早期であれば尿管再建術等で治癒することができたか,④腎瘻造設時期が早期であれば,高度の腎機能低下を回避することはできたか,⑤腎瘻が後遺障害等級7級の「尿管,膀胱及び尿道の障害」に該当するか

(4)結果
1500万円で示談成立。