日本は遅れている? 「がん登録」の法制化は必要なのか?
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患者がかかったがんの種類や進行の程度、治療後の経過などの情報を集める「がん登録」。法制化することで、これを押し進めようという動きが進んでいる。超党派の国会議員でつくる「国会がん患者と家族の会」がこのほど、新法の要綱案を公表した。国会への提出へ向け、現在広く意見を募集している。
がんは、いまや国民の2人に1人がかかるといわれる病気だ。情報収集や研究なども相当進んでいる分野なのではないかと思えるが、これまで通りのシステムではどこがいけないのだろう。「がん登録」は現在どんな仕組みで行われていて、それを法制化することでどのような違いが生まれてくるのだろうか。医療過誤裁判にも力を入れている坂野智憲弁護士に聞いた。
- 国レベルの「登録」がない日本は、アメリカやEUに比べて遅れている
――「がん登録」の狙いは?
「『がん登録』は、診断や治療、その結果など、がん患者に関する情報を収集して、整理、解析する仕組みです。
がんの発生状況やがん治療の実態を把握することで、治療の質を向上したり、がん対策の資料を整備するというのが、その目的です。
たとえば、がんの臨床病理学的特徴・進行度・治療方法ごとの生存率など、臓器ごとに分類された情報が適切に把握されていれば、より良い治療指針を立てるために大いに役立ちます」
――日本の取り組みは遅れている?
「がん登録は、アメリカ、EUをはじめ世界各国で実施されており、その約半数では、法律で登録を義務付けています。
ところがわが国では、国レベルのがん登録は行われていません。自治体レベルでは『地域がん登録』が行われていますが、国の予算措置はありません。実施されているのも31道府県、1市にとどまります」
――ということは、現在、地域によってかなりのバラツキがある?
「そうです。登録方法や作業手順、情報処理、担当部局の体制なども、自治体によって異なります。この方法の違いは、がん統計の内容とその信頼性に大きく影響します。
また医療機関から地域がん登録への届出は、個々の医師の協力に依存しています。そういう状況では、多忙な医師から全症例について協力を求めることは困難です」
——つまり、この法整備は必要?
「そうですね。がん登録の信頼性、実効性を担保するには、作業の標準化、マニュアル整備、登録実務担当者の育成が必要です。
これを実現するためには、がん登録を国家レベルのがん戦略と位置づけ、標準的な方法でがん登録が実施されるための法整備が必要と思われます」