坂野法律事務所|仙台|弁護士|

【営業時間】平日09:00〜17:00
022-211-5624

最高裁医療過誤判例分析

告知義務に関する判例

(1)判決日等
H14.9.24
判時1803
P28~

(2)発生時期等
H2.10
77歳男性

(3)事例
医師が末期癌の患者の家族に病状等を告知しなかったことが診療契約に付随する義務に違反するとされた事例。

H2.11 肺の進行性末期癌判明
治癒・延命可能性はなく,疼痛に対する対症療法を行うしかない状態。
H3.3まで疼痛療法を施すのみで,家族への連絡を試みることなし。
Aは症状が回復せず,他院受診。
家族が末期癌である旨の説明を受ける。
H3.10 死亡

(4)争点
診療契約に付随する義務として,患者の家族等に対する告知義務があるか。

(5)内容 
医師は,診療契約上の義務として,患者に対し診断結果,治療方針等の説明義務を負担する。そして,患者が末期的疾患に罹患し余命が限られている旨の診断をした医師が患者本人にはその旨を告知すべきではないと判断した場合には,患者本人やその家族にとってのその診断結果の重大性に照らすと,当該医師は,診療契約に付随する義務として,少なくとも,患者の家族等のうち連絡が容易な者に対しては接触し,同人又は同人を介して更に接触できた家族等に対する告知の適否を検討し,告知が適当であると判断できたときには,その診断結果等を説明すべき義務を負うものといわなければならない。なぜならば,このようにして告知を受けた家族等の側では,医師側の治療方針を理解した上で,物心両面において患者の治療を支え,また,患者の余命がより安らかで充実したものとなるように家族等としての出来る限りの手厚い配慮をとることができることになり,適時の告知によって行われるであろうこのような家族等の協力と配慮は,患者本人にとって法的保護に値する利益であるというべきであるからである。
医師の対応は,末期癌に罹患している患者に対するものとして不十分なものであり,医師には患者の家族等と連絡を取るなどして接触を図り,告知するに適した家族等に対して患者の病状等を告知すべき義務の違反があった。

(6)ポイント
連絡が容易な家族が存在し,その家族が現実に患者の終末のための配慮をなし得たという事案ではあるが,患者家族に対する告知義務を認めたもの。